モノトーンの黒猫

モノトーンの黒猫 モノトーン編中6-2

6-2

 

 

翌日は、ふたりそろって寝坊した。

アルバイトという縛りがなかったとはいえ、10時過ぎまで起きなかったとは時間がもったいない。

片手で難儀しながらも手洗い場にて顔を洗い、使用していたシーツとタオルケットを畳んで凍牙の寝ていたソファの上に置く。

階段をずり落ちた服のままベッドにいたことは、朝になってから気付いた。

砂ぼこりに汚れた寝具のクリーニング代は後日柳さんに渡そう。

受け取ってもらえるかは別だけど。

店のドアに鍵を閉めて、わたしと凍牙は雨知らずを後にした。

途中、マンションへの帰り道にあったパン屋に入った。

凍牙に少しだけ待っててもらい、朝食兼昼食を購入する。

昨日の昼以降飲まず食わずだったので、さすがにお腹が空いていた。

レジでパンを入れる袋を2つに分けてもらい、片方をパン屋の前にいる凍牙に渡す。

 

「あげる」

「金は払うぞ」

「いいよ。ついでだったし、このぐらいでケチなことは言わないよ」

 

勝手に商品を選んで買ったのはわたしだ。

空腹だったのは凍牙も同じようで、2人でパンを食べ歩きながらマンションを目指す。

 

「味あるのか、それ?」

 

クロワッサンをほおばるわたしに凍牙が聞いた。

怪訝な顔をされたのは、わたしが食べているパンが1つ目も2つ目もクロワッサンだったからだろう。

凍牙にはベーコンとチーズ入りのクロワッサンと、クリームディニッシュパンに、紙パックのコーヒーが入った袋を渡してある。

サクサクとした食感のものが多いのは、わたしの好みが影響していた。

 

「塩加減がちょうどいいよ」

 

スーパーに置かれるクロワッサンとは違い、パン屋で買うものは香ばしくて温めなくてもおいしい。

追加の味付けをしなくても普通においしく食べられる。

 

「お前の作ったあの弁当といい、薄い味が好きなのか?」

 

これは誤解だ。凍牙に作ったものと同じおかずを食べたわたしでも、あの味付けは失敗だったと断言できる。

 

「こういうシンプルな味も好きってだけで、濃い味付けも食べられるし好きだから」

 

納得したのかしていないのか、凍牙はへえと呟いてさっさと完食してしまった。

商店街の表通りを避けて、裏道を使ってマンションへと帰る。

午前中とはいえ日差しはかなりきつかったが、道の左右に植えられた並木のおかげで日陰を歩き続けることができた。

 

「そういえば、わたしと春樹たちのつながりってどこの何から発覚したのか知ってる?」

 

ずっと疑問に思っていたことを、凍牙なら櫻庭先輩から何かを聞いているかと尋ねてみる。

吉澤先生や柳さんが現役に教えたとは考えにくい。最初は高校にあるわたしの出身中学のデータを見られたのかと思ったけれど、そこから春樹とわたしを結び付きを確定してくるのは浅慮すぎる。

その場合だと、少なくともわたし自身に皇龍の誰かしらが確認を取りに来るはずだ。

わたしを捜していたという連中の話を聞きつけて、そこから勝手に決めつけられたなんて浅はかなことはないだろうし。

 

「発覚の情報元となったのは、俺たちの卒業アルバムだ」

「ああ、生徒会の集合写真でも見られたか」

 

3年の10月まで務めていた生徒会は、会長に春樹、副会長に有希が就任していた。

各2名ずつ選出される書記と会計には、それぞれ綾音と菜月もいたし、わたしも庶務として役員に名を連ねていた。

生徒会のメンバーでの集合写真を撮った覚えはある。

あれには春樹と一緒に写ってたな。モノトーンに名を連ねる者たちとは面識がないなんて言い逃れは、確かにできそうにない。

 

「だけどあの写真だけでわたしが春樹の仲間だなんて勘ぐるのは、ちょっと安直すぎるんじゃないかな」

 

現に残りの書記と会計の2人は仲間内と関係のない生徒だったわけだし。

 

「……お前」

「何さ?」

「アルバム見てないだろ」

 

その通りだが。

あきれ果てた凍牙の口ぶりに、嫌な予感がこみ上げた。

 

「……あいつら、何かやらかしてるとか?」

 

言ったものの、卒業アルバムはプロのカメラマンと業者が制作するものだ。春樹たちが出来る細工など限られてくる。

 

「それは自分の目で確かめろ。いいか、帰ったら絶対開けて見ろ。分かったな」

 

念を押した後、凍牙はぼそりとこぼした。

 

「俺のクラスは担任が柳さんだったから割り切って済まされたが、他のクラスはいい迷惑だっただろうな」

 

何を指してそれを言ったのか、見当もつかなかった。

 

 

続く


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