モノトーンの黒猫

モノトーンの黒猫 モノトーン編中4-3

4-3

 

  ☆  ☆  ☆

 

厄介な物事が重なり、慎重な行動が余儀なくされた今年の夏休み。

日々を過ごす中で多少は力を抜く時間があったとしても、緊張を強いられる場のほうが最近は圧倒的に多い。

誰が見ているか分からない街中での振る舞い。皇龍とのやり取り。

注意の度合いは違えど、わずかなミスが今後を左右しかねない危うい状況が続いている今。重ねるように降りかかった更なる災難に平和的解決を望めるほど、俺は心が広くない。

結衣が去ってもなおわめく男どもの耳障りな声に苛立ちが増す。

 

「お前らはモノトーンなのか?」

 

自分でも常より低いと分かる声で問いただすと、こいつらは黙り込んだ。

目を泳がせながら、気まずそうに小太りの男が口を開く。

 

「……モノトーンに、入りたいんだ。そのためにはまず、高瀬に許してもらわねえと、武藤も納得してくれねえだろうし」

「どうやって結衣がここにいることを知った?」

「それは……」

 

小太りがポケットからスマホを取り出して操作する。

 

「これが俺たちの街にも流れて来たんだ。それで、これ見せながら近隣の街で聞きこんで……。モノトーンが捜してるって言ったら、聞いた連中はかなり真剣に答えてくれたよな」

 

あほどもが。

チームに所属すらできていないやつが、勝手にチーム名を騙ってどうする。

影響力を考えろ。

たとえ武藤が同級生であったとしても、こいつらがそこまで馴れ馴れしくしていいはずがない。

まさかこの行いを、武藤が同級生のよしみで許すとでも思っているのか?

いつかのチェーンメールを見せて来た小太りにさらに一歩近付く。

 

「この街は皇龍というチームが仕切っていることを知っているのか?」

「……皇龍? 高瀬が取り入ろうとしてるっていうチーム――」

 

言い終わる前に、小太りの鳩尾にこぶしを入れた。

小太りの手からスマホが離れ、体が崩れ落ちる。

隣で唖然とする細身の男にも、首の後ろを掴んで膝で腹に一撃をくらわせる。

 

「なんだっ!」

 

突然の行動に固まっていた連中が動き出し、俺から距離を取って警戒しだす。

 

「もういい。てめえら喋るな」

「ああ!? んなことてめえに言われる筋合いはねえんだよ!」

 

こいつらの怒りが高まるにつれて、感情が冷めていく。

武藤がこいつらをモノトーンに入れたがらない理由がよく分かる。

周りを顧みないうえ、出所も定かでないメールを信じる馬鹿どもに、たとえ同じ中学のよしみであっても「モノトーン」を名乗らせたくはないはずだ。

だからといって放置もどうかと思うが。

後で文句のひとつぐらいは言ってやろうと決意する。

不意打ちをくらってうずくまっている2人が復活する前に、さっさと終わらせるとしよう。

狭い小路なので、後ろに回られなければこの程度のやつらは問題ない。

ついでに最近溜まっていたストレスもこいつらで解消してもいいだろう。

感情のままにためらわず、靴の底で強く地面を蹴りやつらとの距離を詰めた。

 

  ☆  ☆  ☆

 

続く


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