モノトーンの黒猫

モノトーンの黒猫 龍華編下2-5

2-5

 

 

それから週末まで、凍牙とは顔を合わせずに過ごした。

 

 

土曜日。

カプリスのバイトを昼で早退させてもらい店を後にする。

静さんには事情を話して、戻れるようなら閉店作業は手伝いに来ると伝えた。

カプリスを出た足で、アークへと向かう。

 

「すみません、櫻庭先輩はいらっしゃいますか」

 

アークで顔なじみになったウェイターに声をかけると、怪訝そうに顔をしかめながらも2階から目的の人物を呼んできてくれた。

 

「君さー、いつもアポなしで来るけど、俺が不在だったらどうしてたわけ?」

 

階段を下りて来る櫻庭先輩の後ろには野田先輩と千里先輩、そして日暮先輩が付いて来た。

豪勢な顔ぶれだな。

凍牙の一件もあって、警戒されているのかもしれない。

 

「その時は変わりの人をお願いしました。今日は少し急ぎの用事なので」

「個人的な?」

「いいえ。本日はモノトーンとしてお伺いしました」

「うわー。どう考えてもいい話じゃなさそうだねー」

 

いい話かそうでないかはそちらが決めることだ。

軽口を叩きながら案内されたのは、いつものソファースペース。

わたしの正面に櫻庭先輩と千里先輩が座り、その後ろに日暮先輩と野田先輩が立った。

 

「で、君の用件は?」

「事後承諾に伺いました。今この街でモノトーンが暴れていますので、一応報告をさせていただきます」

 

前にいる4人の男たちは動かない。櫻庭先輩ですら笑顔のまましばらく固まっていた。

 

「……今?」

 

気を取り直した櫻庭先輩が笑いながらも聞き返す。これにはすんなりと頷いて応じた。

 

「はい。現在進行形で」

 

この目で見て確認はしていないけど、あいつらはやると言ったからには本気でやる。

街で起こる有事に皇龍が出遅れるのは痛手なのだろう。

日暮先輩の責めるような視線からは微かな怒気が伝わってくる。

 

「ちなみに、どこで何をやらかしてくれているのかなー?」

 

焦りが見え隠れしている櫻庭先輩を、余裕たっぷりに嘲笑う。

 

「街のどこか、人気のない広い場所で、龍華を潰してます」

 

千里先輩と野田先輩が息をのんで目を見開く。

わたしがモノトーンとしてここにきたことで、ある程度予想はついたはずだ。

櫻庭先輩は奥歯を噛みしめながらも笑みを崩さない。

 

「それは水口君のため、なのかなあ?」

「ええ。モノトーンは仲間に手を出す者に容赦はしません」

「仲間じゃないでしょ。水口君は龍華の人間なわけだし」

「仲間ですよ」

 

さも当然のように断言した。

笑うのを止めた櫻庭先輩に、やり取りを静観する彼らにはっきりと告げる。

 

「だって凍牙は、龍華に入る前からモノトーンでしたから」

 

虚を突かれたように先輩たちは硬直する。

何を言ってるんだこいつはと、口に出さずとも視線が語っていた。

皇龍に合わせてわたしが焦って慌てる必要はない。

ソファにもたれかかって、尊大な態度であちらの出方を待つ。見下すように、そして挑発的に微笑みながら。

 

 

 

偽りを真実へと変えるのに、魔法なんていらない。

 

この口と、仲間への信頼があれば十分だ。

 

 

続く


BACK  TOP  NEXT

Loadingこのページに「しおり」をはさむ