季刊更新

水守の狼と花守の猫 2018.spring5 end.

水守の狼と花守の猫

2018.spring

 

5.


 

ようやく 黒猫の役目が果たされる時が来ました

大切にしていたみっつの種が 泉の近くに宿されます

 

ひとつめの種は地中を走る根を這わせ やがて大きな樹木へと育ちました

木の根は雨水を大地に溜め込み おい茂った葉に隠れるようにできた木の実が やがて次なる樹木の元を生み出します

 

ふたつめの種から芽吹いたのは 背の低い草でした

小さいけれども草はとても生命力に満ち溢れ 雨後の荒れ地を瞬く間に緑の草原へと変えていきました

 

 

そして黒猫は 木陰の揺らめく泉のほとりに 最後の種を植えます

芽吹いた種は黒猫の背丈ほどまで成長し 鮮やかな花を咲かせました

 

それまでは流れのままにとどまろうともしなかった雨は 樹木の根によって地中に居場所を見つけました

 

 

雨水は水脈となって森全体に張り巡らされ 渇きの季節に植物たちを守ります

 

 

 

そうしてゆっくりと 忘れ去られた最果ての地で静かに根付いた緑は 黒猫と狼が見守る中で人知れずはぐくまれてゆくのでした

 

 

2018.spring end.


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