モノトーンの黒猫

モノトーンの黒猫 モノトーン編中3-5

3-5

 

 

付き合っていることを周囲に認知させるためにこうして2人で歩いているわけだけど、街中よりも人気のない場所のほうが好きだった。

本末転倒な気がしないでもないが、この公園の遊歩道はわたしのお気に入りだ。

公園を抜けると、表通りから一筋離れた、バーやクラブが乱立する道へと向かう。

まだ明るい夕方の時間、開店している店は少なかったが、道端には若者がたむろしていた。

信号のない細道を曲がり再び商店街へ出て、今度は駅に背を向け学校がある方面へと歩く。

人がいるところでは、わたしと凍牙の会話はほとんどなくなる。

いつ誰が聞き耳を立てているか分からない状態では、出来るだけ余計な口をこぼさないよう心掛けているからだ。

商店街が終わると、通りに賑わいが消えた。

そのまま進んで行き着いた学校は、お盆期間だからか人気がなく、門扉は完全に閉まっていた。

徐々に暗くなる空の下、マンション前の坂道で凍牙と向き合った。

 

「春樹と彩音のこと、もう一度よく考えるって決めた」

 

次に会った時、答え合わせが出来るように。

互いに笑い合える、あの関係を再び取り戻すために――。

わたしの言葉に、凍牙は無表情で口を開いた。

 

「――だったらなおさら逃げんなよ」

 

逃げるな。さっきも聞いた。

甘えのない、厳しい言葉を凍牙はわたしに付きつける。

 

「向き合うというなら、お前の武藤への情が恋愛でない言い訳探しだけでなく、恋愛対象として武藤を捉えている可能性も視野に入れるべきだと俺は思うが」

「……うん。そうだね」

 

凍牙の言葉を聞いて、綾音の泣き顔が脳裏をよぎる。

放った声に、力は入らなかった。

わたしの答え次第では、また綾音をかなしませてしまいかねない。向き合うと決意したのなら、この現実も覚悟すべきなのか。

凍牙と別れてマンションへと入る。

エレベーターに乗っていると、知らないうちに頬に水滴がつたった。

ひとりで静に泣いているわたしは、人に見られたらさぞかし滑稽に映るのだろうが、幸い部屋に帰るまで誰にも出くわさずに済んだ。

 

 

逃げるな。

その一言が、胸に刺さる。

所詮わたしの決意なんて、上辺だけのものだったのだと思い知らされたみたいだ。

本当は自分の気持つと向き合うことがどうしようもなく怖い。

付きつめた答え次第で、もう二度とみんなに顔向けできない可能性だってある。

空気のこもった部屋で、大窓を全開にして換気扇を回した。

誕生日プレゼントだと涼君が贈ってくれた、羽根のない扇風機をふる稼動させて空気を入れ替える。

心を落ちつけようと、何度も深呼吸を繰り返す。

涙は止まっても、心臓はうるさいままだ。

 

どんなに息を吐き出しても、ぐちゃぐちゃの脳みそが整理されることはなかった。

 

 

続く


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